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2007年5月26日 (土)

1人1日1キロ?あるいは国民運動とは?

 昨日の新聞は,首相が一昨日発表した政府の新しい温暖化対策戦略「美しい星50」を大きく扱っていました。今の首相は「美しい…」が好きなようですが,たまにニュースを見るぐらいの僕には,この人が語る「美しい…」には首をひねるばかりです。

 と,今日はこの首相の提案中の三つ目「提案3:京都議定書の目標達成に向けた国民運動の展開」について少し。京都議定書の目標達成のため,「1人1日1kg」の温室効果ガスの削減をモットーとして国民運動を展開するのだそうです。家庭や事務所の省エネは,それ自体はもちろん大切なことです。このブログの「我が家の省エネ」も,もしかしたらどなたかの参考になればと思って書いています。

 が…。政府は以前から似たようなことを言っていますが,日本の二酸化炭素排出量はいっこうに減る気配がありません。市民の意識に訴える事はもちろん大切ですが,それだけでは全く不十分だと思います。それよりも,市民(そして企業も)省エネをする仕組みを作ることが必要ではないでしょうか。その一つの優れた方法はいわゆる「炭素税(環境税)」の導入です。欧州では多くの国で環境税が導入され,その効果が示されていますが,首相の話の中では一言も触れられていませんでした。

 炭素税(環境税)とはガソリンや石炭などの化石燃料に対して,課税してその価格を上昇させることによって,消費を減らそうというものです。税収が目的の税ではないので,その税収を全て市民や企業に還元することも可能です。エネルギーを節約する個人や企業がそれだけ得をし,より多く消費する人はそれなりの負担をするという,非常に公平な社会へ誘導する働きがあります。制度設計により,環境にも経済にも雇用にもプラスに働きます。例えば次のサイトに簡単な説明があります。↓
http://www.jacses.org/paco/carbon/whatis_carbontax.html

 炭素税の詳細については別の機会にしますが,今日もっとも問題にしたかったのはもう少し別のことです。今回の首相の提案には三つの柱があるそうで,その二つは中・長期戦略に関することです。今の取り組むべき京都議定書の目標達成には,「国民運動」の展開しかあげていません。「国民運動」というと国を挙げて温暖化対策に取り組もうという響きがあります。そして,この問題は国を挙げて(あるいは世界をあげて)取り組むべき問題ではあります。しかし,政府が「国民運動」というとその中身は,主に一人一人が家庭や職場で行う運動のようです。いわく「「1人1日1kg」の温室効果ガスの削減をモットーとして、ライフスタイルの見直しや、家庭と職場での努力や工夫を呼びかけます」。では企業・産業界は何もしなくても良いのでしょうか?あるいはもう十分対策をしているとでも?

 最近,興味深い論説を読みました。NHKで放送されてものだそうですが,「“乾いた雑巾”は本当か」↓というものです。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/3145.html

少し引用すると「まず、「日本の効率は世界一」という点についてですが、……[GDPあたり]エネルギー消費が他国と比べて圧倒的に低いのは、家庭と運輸で、産業やエネルギー部門はあまり他国と差がありません。……これはつまり、日本の家屋が小さく、欧米のようにセントラル・ヒーティングになっていないことなど生活が質素で、またぎゅうぎゅう詰めの通勤電車で通勤している人が多いことなどによるものであり、決して発電・産業部門の効率が良いからではないことが見て取れます。」

 日本の産業部門の効率が落ちていることは,色々なところで指摘されています。この様に,産業・企業分野でももっと削減できるように思えます。そして,もう一つ重要な点は,家庭から出る二酸化炭素の量は実は,日本全体のごく一部にすぎないということです。2005 年度の温室効果ガス排出量速報値↓の表を見てみてください。
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=8616&hou_id=7603

 その他は産業・企業(運輸部門やエネルギー転換部門等も広い意味で産業・企業に含めています。念のため)から出ているわけです。更に,日本の二酸化炭素排出量の約半分は約200程度の大規模事業所からのものだそうです。↓
http://www.kikonet.org/theme/kokunai/2003haisyutsuryo/databunseki2003ver2.pdf

  だったら,1億人以上の人に呼びかけるより,約200の事業所の対策を行った方がよっぽど効率的ではないの?とふと思ってしまいます。

 「国民運動」はもちろん大切だけれど,もっと大切なのは産業部門を含む国を挙げての対策のはずです。産業部門が日本の温室効果ガスの大部分を排出していること,更に排出削減余地がまだまだあることを考えれば,「国民運動」を強調するだけでなく,産業部門の対策ももっと強力に推し進める必要があると思います。そして,その為にも日本として炭素税や排出量取引の導入が必要だと思います。と結論を急ぎました。

 僕のブログとしては長くなりすぎましたので,今回はこれぐらいにします。ドイツ語は間に合わなかったので,数日遅れる予定です。

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